Welcome to the desert of the real.

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2019年に読んだ本(上半期)

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読書自体がわりと習慣化されている我が家。

一年間で何冊本を読むかと年初に目標を立て、読み終えたらカレンダーに書き込むということを昨年から始めた。

というわけで、ジャジャーン、2019年の結果発表!

父:40冊/50冊  達成率80%(駆け込みで今日40冊目到達!)

*娘と妻の結果公開は許可未取得

残念ながら、家族全員目標未達成。それにしても、わが娘、目標が300冊....結果もそれなりで冊数ではダントツ。来年の目標はおそらく多少現実的なラインに置いてくることだろう。母も結果には満足していないみたい。母は日々忙しいのだ!!

一方出張の多い父は機内やホテルなど1人になる時間が多かったという環境がプラスに。が、この高めの達成率は弱気な目標設定によるものだ。例年50冊を目標にしていたので。

一応、自分で読んだ本を振り返っておく。

まずは、上半期分

1月(5冊)

1.ジュリアス・シーザー(シェイクスピア)

「ブルータス、お前もか」

そういえば、今年は年初に「シェイクスピア」を多く読んでみよう!と言ってたっけ。。。結果、このジュリアスシーザーのみだった。。戯曲そのものがなかなか入って来ない。

2.殺人鬼フジコの衝動(真梨幸子)

人は育ちがここまで影響するものなのか。それとも生まれつき何かが備わっているものなのか。殺人を殺人と捉えられなくなる何か感覚が麻痺するかなり衝撃なストーリー。続編とともにミステリーいやスリラー好きにはおすすめ。(怖いよ)

スリラーやミステリーを読んで体験する「え!」という感覚は、思考の偏りをほぐしてくれる。

3.資本主義と自由(ミルトンフリードマン)

これでもか、というくらいの徹底した自由主義者ミルトン・フリードマンリバタリアンのバイブル的な書。自由であることを実感できる機会が少ない今だからこそ、「自由の追及」から見えてくるものがある。

4.インタビュー・イン・セル(真梨幸子)

えぐい、えぐい、えぐい!!

殺人鬼フジコの衝動の続編的な。内面をえぐられる衝撃が襲ってくる。真梨幸子という作家をもう少し掘り下げてみたい。(怖いよ)

5.ワインズバーグ、オハイオ(シャーウッド・アンダーソン)

ずっと本棚に眠っていた一冊。

架空の街「ワインズバーグ」。時代に取り残された過疎の地域に住む人々の関わり合いを描き出す。物語は淡々と進むのだけど、ページを捲る手を止めてその場の情景を脳内でイメージ化したくなる、そんな作品。

2月(2冊)

6.不倫と南米(吉本ばなな)

人生初ばなな。

初なのに、なぜにこの一冊であったかは記憶にございません。スナップ写真に釣られたかな。「キッチン」も買ったのだけどまだ読めてない・・・・

7.映像の修辞学(ロラン・バルト

記号論的写真論。ストックフォトというイメージクリエイティブ分野に携わる自分的には多くの刺激と学びのあった一冊。別の機会に掘り下げる

3月(4冊)

8.資本論1(マルクス)

ここ数年、資本主義とは何かと気になっていて、関連本を片っ端から読んできたのだけど、様々な著書で引用・言及されるマルクス資本論

ともかく長年挫折に挫折を繰り返していた本書。(1)では商品・生産の視点から市場の仕組みを読み解いていくのだが・・・価値形態(交換価値)のところは、後にボードリヤールを読むようになって再度読み返してみた。なるほどなと。

ただ、時間のことを考えれば全体的な解説本的なものが沢山出ているのでそれで十分かも知れない。今回やっと(1)を読みきっただけでも良しとしておこう。

9.小さなチーム・大きな仕事(ジェイソン・フリード)

(再読)いわゆるビジネス本を最近はあまり読まなくなったのだけど、現状の海外事業における業務に関連して再読した。

世界市場を見据えたイメージクリエイティブビジネスという分野では、縦割りの大きな組織ではなく(組織規模が大きくなるとどうしても縦ラインが必要になる)各国に少数のメンバーが分散されていつつ管理面が緩やかに統合されているいわば「十字型組織形態」(内田命名)が一つのあり方ではないかと常々考えている。こちらも別の機会に掘り下げる。

10.ジゴロとジゴレット(サマセット・モーム)

モーム、短編もいい。というかこの8編いずれもいい!

彼の小説は人物の心象を脳内でイメージ化する訓練に本当に役立つ。

11.パルプ(チャールズ・ブコウスキー)

年に一回は触れてギャフンと言わされたくなるブコウスキー

主人公の探偵ニック・ビレーンがなんとなく何者かであるのを感じされるために、何者でもない奴がメインの数々の短編に比べれば若干モラルが滲んでるかも。

ブコウスキーを読んでいると、「お前の人生嘘っぱちだろう」とウィスキーのグラス越しに睨みつけられている気になるのだけど、そういうのを一つ一つ撥ね付けて成長していくしかないのだろうな。また昔の短編読み返しながら修行しよう。

4月(6冊)4月は沢山読んだなぁ。

12.繁栄(マット・リドレー)

(人類の並外れた変化は)ひとつの脳の中で発生したものではない。複数の脳の間で発生した、集団的現象なのだ。(プロローグより引用)

かなり刺激を受けた一冊。

世の中常として人類の未来はディストピア、いわゆる悲観論が常に優勢なようにみえるが、本書はかなりの楽観論的展開である。もちろん根拠も明示している。

人類の「分業」と「交換」で発展してきた歴史を追いつつ、結論としてはそれによって「創造的時間」が生まれたことが加速的発展の要因であると。

これからはその時間から生まれる「イデアの交換=共有」がキーポイントになるという。以前読んだクリスアンダーソンの「MAKERS」で強烈の覚えている「アイデアはシェアされると拡散する」という言葉を思い出す。これが今携わっているビジネス(PIXTA)でも活かされている。ただ、時代はインターネットの発達によって「共有」「拡散」はすでに何周もしている感はある。その先にある方向を構想していきたい。

13.彼女がその名を知らない鳥たち(沼田まほかる)

数年前?「ユリゴコロ」ではまった沼田まほかる

好きになることって理性じゃない。なんでそんな奴を好きになるのか、なんて他人にはわかり得ない。だけど「罪」が絡んでくるとむしろ・・・・爽やかな読書体験ではないことは保証できる。

14.リバース(湊かなえ)

まぁそんな感じで。

15.レキシントンの幽霊(村上春樹)

孤独な寓話的短編集、とでもいいましょうか。特に氷男の話、切ない。

たまに読みたくなる村上春樹。「羊をめぐる冒険」と「世界の終わりとハードボイルド」が僕の中での代表作。読み返してみようかな。そんな時間あるかな、、、

16.ガラスの街(ポールオースター)

ムーンパレスでやられたポールオースターの長編第1作目ということで。

極度に淡々。そう、それがタイトルに現れている。全ては無色透明なのだ。見えすぎるというよりは存在感の希薄さ、という点で。

彼は結局、偶然以外何ひとつリアルなものはないのだ、と結論を下すことになる。だがそれはずっと先のことだ。はじめには単に出来事があり、その帰結があった、それだけだ・・・(P5引用)

17.ロートレック荘事件(筒井康隆)

クラシカルな推理小説

推理小説のランキングでは色々なところで上位に食い込んでいるのでずっと気になっていた。期待感が高すぎたのかも知れない。自分は一体何を期待していたのか、というのはあるのだけれど。

5月(4冊)

18.レトリック感覚(佐藤信夫)

昨今、限りなく無色透明の最短距離でのわかりやすさが蔓延している感のあるイメージクリエイティブ界隈。僕はもう少しじっくりと時間をかけて味わうというか、しばらく経ってから「あ、そうか」という感覚が押し寄せてくる違いイメージの必要性を最前線で働いていて感じている次第。それには、幻想・神話・暗示・隠喩-換喩といったレトリック的な観点の適用可能性を模索しているのであったりする、などなど。佐藤信夫さんのレトリックに関する一連著書は読破するつもり。

19. 神話の力(ジョーゼフ・キャンベル)

人間がほんとうに求めているのは、<いま生きているという経験>だと思います。純粋に物理的な次元における生活体験が、自己の最も内面的な存在ないし実体に共鳴をもたらすことによって、生きている無常の喜びを実感する (第1章 神話と現代の世界 冒頭より引用)

あの「千の顔を持つ英雄」の著者とのインタビュー形式。

これは、なんというか圧倒的すぎてかつイメージクリエイティブにも多大な一撃を与えうる内容で、再読決定。感想は2020年に委ねるとする。

20.猫のつもりが虎(丸谷才一)

小説は読んだことあったのだけど、こちらはエッセイ。

普段から、他人の考えの引用に懸命になるのでなく、自分の頭で考えることに素直になるとこういう観点で文章を書くとこうなるという例。なので、エッセイを書く、ということの本当の楽しさを感じさせてくれもする。

21.最後の喫煙者(筒井康隆)

独自の暴走的目線から爆書きしたと感じさせる氏の短編集。これくらい自分を解き放ち完全なる自由思想じゃなきゃ小説なんて書けないだろう。いや、書いてはいけないのかも知れない。

というか、昭和60年代の日本は既にそんなに禁煙ブームだっけ?

国会議事堂の頂きに座り込み、周囲をとびまわる自衛隊ヘリからの催涙弾攻撃に悩まされながら、俺はここを先途と最後のタバコを喫いまくる(最後の喫煙者 冒頭より引用)

6月(0冊)

0冊!!!

振り返ってみれば、6月は仕事が忙しかったというか、年初の仮説に対し実行フェーズでの差異が徐々に顕在化し、下期への変化変更の必要性が増した時期。だいぶストレスが溜まっていたのは正直なところ。

僕の場合はストレス負荷と読書量が反比例するのだね。多分酒量は比例関係にあったと思う。

 

2019年の上期は、前年の反動からか小説系が多かった印象。

それにしても古典といわれるものや、適度に古めの名作がそれこそ無数に存在しているなか、「新刊もの」に手を出す暇というか余裕が持てません。下期分は絶賛おまとめ中。

それではまた!